エモクロアTRPGシナリオ 忘れじの言の葉

概要

「好きです、付き合ってください」

「ありがとう、また明日ね」

そんなありきたりだけど、大切な言葉を口に出すことは案外難しい。

今日こそは、と思って一日が過ぎてしまう。だから私は星祭りに願いを託すことにした。

それがまさか、あんなことになるなんて。でも、ちゃんと伝えないと。あの時、伝えようと思った言の葉は……何だっけ?

ハンドアウト

あなたはDPCのことが好きだ。

あなたは過去に、大切な想い(それが恋心であれ、感謝であれ)を「伝えられなかった」ことで深く後悔した経験がある。

DPCに対して芽生えたこの感情を、今度こそ失いたくない。過去のトラウマを乗り越えるように、あなたは星祭りで告白することを決意した。

推奨共鳴感情:「愛」「恋」

推奨技能:〈直感〉

また、DPCとの関係性を事前に設定しておくことをオススメします。

舞台:美星ヶ丘(みほしがおか)

都心から電車で約1時間。ベッドタウンとして発展した「新市街地」と、古くからの宿場町の雰囲気を残す「旧市街地」が、町を流れる川(通称:天ノ川)を挟んで共存している。

駅前(新市街地側)は再開発されており、駅ビルや中規模のショッピングモール、チェーンのカフェなどが立ち並び、若者も多い。

天ノ川を渡った旧市街地側は道が細く、古民家を改装したカフェや昔ながらの商店街が残っており、景観保護地区にも指定されている。

この町はかつて星空が美しいことで有名で、独自の七夕伝説が残っている。

「星祭り」は町を上げての一大イベント。旧市街地にある「美星神社」を中心に旧市街地全体で祭りを行う。

御神木がメインスポットとなっており、ここで告白すると恋が実るなんてあまりにもベタな噂が飛び交っている。

怪異:「忘れ恋の霞(わすれごいのかすみ)」共鳴感情:諦観、恋、愛

「忘れられた恋」が集まって生まれた、霞のような存在。

怪異の正体と動機

正体: あの御神木(あるいは古い笹)に、長い年月の間に結び付けられてきた「叶わなかった恋の願い(短冊)」や「伝えられなかった想い」の集合体。

核: その中心には、昔、七夕の夜に結ばれるはずだった恋人が、想いを伝えられずに亡くなったという「最初の悲劇」がある。

動機: この怪異は、悪意でDPCを襲ったのではありません。 DPCが抱いていた、「両片思い」が成就する寸前の「純粋で強烈な恋(愛)の感情(願い)」。 それは、怪異が求めてやまなかった「叶うはずだった恋(愛)の記憶」そのものでした。 怪異は、その「成就の瞬間」を疑似体験したくて、救いを求めて、DPCに触れて(共鳴して)しまったのです。

「寂しかった」「叶えたかった」という、ある意味で純粋な動機です。

記憶喪失のメカニズム

怪異は「記憶」を食べるのではありません。

怪異は「叶わなかった想い」の集合体です。DPCに共鳴した際、DPCの記憶(思い出)に、怪異の持つ膨大な「失恋」「諦め」「忘却」の感情が上書きされてしまうのです。

だから、DPCの記憶は「消える」のではなく「霞(かすみ)がかかったように思い出せなく」なります。

しかし、DPCの「好き」という感情は、怪異の核である「最初の悲劇」の想いと強く共鳴しているため、最後まで消えません。それが「忘れじの言の葉」の正体です。

【物語の真相】

御神木は、古くから「恋の願い」を叶えると言われてきました。

しかし「真相」は、叶った願いは天に昇り、「叶わなかった願い」は御神木に蓄積されていくというものでした。

星祭りの夜は、一年で最も「恋の願い」が交錯する日。そのエネルギーが最高潮に達し、蓄積された「叶わなかった想い(=怪異)」が活性化してしまうのです。

DPCは、共鳴者への「好き」という想いを、あの御神木の前で(告白されようとした瞬間に)最高潮に高めていました。その「成就寸前の、純粋な恋心」は、何百年も叶わなかった想いの集合体である怪異にとって、強すぎる「希望の光」に見えました。

怪異は、DPCを「仲間(叶わなかった恋)」に引きずり込もうとしたのではなく、DPCの「成就」に触れることで、自分たちも「救われたかった」のです。

この物語の「救い」は、二重になっています。

共鳴者が告白することで、DPCを「忘却の霞」から救い出すこと。

共鳴者の「叶った恋(成就した想い)」の力によって、御神木に蓄積されていた怪異(叶わなかった想いたち)もまた、「救い」を得て浄化されること。

共鳴者の告白は、DPC一人を助けるのではなく、その場に溜まっていた「悲しい恋の記憶」すべてを昇華させる力を持つのです。

まとめると、「怪異は、叶わなかった恋の悲しみの集合体であり、DPCの純粋な恋心に『救い』を求めて共鳴してしまった」というのが、この「忘れじの言の葉」の真相です。

DPC

あなたは共鳴者のことが好きだ。

あなたは「願い事」の力を純粋に信じているフシがある。(あるいは、そう信じたいと強く願っている)

今日は共鳴者と星祭り。あなたは、あのお祭りの御神木に「彼/彼女と結ばれますように」と、本気で「願おう」と思っている。

 1. 導入フェイズ:『星祭りの約束』 (55〜100分)

目的: 二人の「両片思い」の甘酸っぱい雰囲気と、星祭りの高揚感を描写する。そして、事件の発生と最初の異変(記憶喪失)を体験する。

【シーン1:導入 (15~30分)】

描写: シナリオの導入。共鳴者とDPCがいつものように過ごしている。お互いを意識しているが、あと一歩が踏み出せない二人の空気感をRPで描写する。

・学生の場合の導入→学校の教室で会うところから等

・社会人の場合の導入→休日に会うところから等

まずはロールプレイに慣れていただくシーン(私のシナリオの導入はだいたいこんな感じ)二人の普段の関係性を明確化する(甘々なのか、ケンカップル風なのか、愛が重めなのか等)DPCの気持ちはこの時点では表に出さない。

イベント: 共鳴者がDPCを星祭りに誘う、もしくはDPCが共鳴者を誘う。この時にDPCからは御神木の話は出さない。もし共鳴者から聞かれた場合でも「そういえばそんな噂もあったね。せっかくだから行ってみようか」くらいの態度で、積極的に向かおうとはしない。

イベント:「星祭り」について<調査>技能を振ることが可能。

成功した場合以下の描写を表示↓

御神木の下で告白して恋が実ったケースも多く見られるが「振られた」「実らなかった」「振られたショックで記憶が曖昧になった」「振られたけどそんなこともある」というケースも同じくらい見られる。噂は確実なものではないということが分かるだろう。

(今回の怪異が「叶わなかった恋の願い(短冊)」や「伝えられなかった想い」の集合体ということをこの時点で匂わすイベント)

【シーン1.5:道草 (10分)】 

 季節は夏。空は突き抜けるように青く、入道雲が遠くの山々に影を落としています。 耳を澄ませば、蝉時雨(せみしぐれ)が降り注ぐ午後。 けれど、今日という日は、あなたにとってただの夏の日ではありません。

7月7日。七夕。 街はどこか浮き足立っていて、今夜行われる「星祭り」の予感が、熱気とともに漂っています。

あなたは今、[DPCの名前]と待ち合わせをしています。 胸の奥にあるのは、今日こそ伝えなければならない言葉と、少しの緊張。 「好きです」 たった一言、その言葉を伝えるために、あなたの物語は動き出します。

描写:待ち合わせは、駅前のよくある広場……ではなく、二人が初めて出会った場所(例:高校の校門前、思い出の公園のベンチ、駅の古い伝言板の前など)。

イベント: 合流した後、DPCが少し恥ずかしそうに「ここで待ち合わせなんて久しぶりだね」と語る。

描写: お祭り会場である美星神社へ向かう道すがら。夕暮れの街並みを二人で歩く。

二人は合流し、星祭りの会場である旧市街地へと歩き出します。 新市街地を抜け、天ノ川にかかる橋に差し掛かると、西の空が茜色に染まり始めていました。

ふと、[DPCの名前]が足を止めます。 そこは、二人にとって馴染み深い場所(例:あの雨宿りをした軒先)でした。

DPC: 「あ、ここ! 懐かしいなぁ……」

DL: 夕日が、彼女/彼の横顔を優しく照らしています。 [DPCの名前]は、懐かしそうに目を細めて、あなたに微笑みかけます。 その笑顔は、とても無防備で、そして愛おしいものでした。 この幸せな瞬間を、永遠に切り取っておきたい。そう思わせるような光景です。

(ここで写真撮影のRPを促す)

イベント: ふと、二人の思い出深い場所(カフェや公園など)の前を通る。 DPCのセリフ: 「あ、ここ! 懐かしいなぁ。覚えてる? 去年の夏、ここで二人で雨宿りしたよね。あの時、二人ともずぶ濡れになっちゃって……ふふっ」

処理: ここでPLにも「楽しかった記憶」を共有させる。可能ならこの場所を背景に、スマホでツーショット写真を撮るロールプレイを誘導する。

(後の伏線): この写真には「幸せそうな二人」が写っているが、シーン5で見返した時、DPCはこの写真を見ても「これ……私? 全然覚えてない」と言うことになる。

【シーン2:星祭り (15〜30分)】

橋を渡りきると、そこはもう別世界でした。 美星神社の参道には、数え切れないほどの提灯が灯り、天ノ川のように奥へと続いています。 ソースの焦げる匂い、甘い砂糖菓子の香り、そしてカランコロンと響く下駄の音。

行き交う人々は皆、笑顔です。 頭上には、徐々に星が瞬き始め、笹飾りが風に揺れてサラサラと歌っています。 まるで、この街のすべての願い事が、ここに集まっているかのようです。

さあ、二人でこの特別な夜を楽しみましょう。 あなたの隣には、大好きな人がいます。

描写: 活気あるお祭りの風景。屋台(りんご飴、たこ焼き、射的など)浴衣姿(キャラの性格によっては浴衣じゃないかも)の二人。

イベント:屋台巡りをする。 DPCの好きな食べ物を当てたり、射的で景品を取ってあげたりするRP。ここは共鳴者が取っている技能を可能な限り用いられる進行を行う(身体技能なら射的とか金魚すくいとか。感覚技能だったら食べ物屋とかおみくじとか)

イベント: 二人で短冊に願い事を書く。「何を願ったの?」「秘密」といった定番のやり取りをしてもいい。

DPCはこの時点では願い事を見せないが「好きな人と一緒に、これからも毎年星祭りに来れますように」という願いを書いており、共鳴者はシーン7以降で見ることができる。

【シーン3:事件発生 (15〜30分)】

描写: お祭りの喧騒から少し離れた、御神木のある静かな場所。

イベント: 辺りには案の定、カップルがたくさんいる。せっかくなら二人きりになりたいと考えたDPCは共鳴者をリードして、御神木の裏手に向かう(次のイベントで崖から落ちてもらうため)

辺りはどんどん暗くなる。そしてようやく二人きりになり、どちらかが告白しようとした時、強制的に次のイベントへ。

イベント:怪異との遭遇。DPCが強い恋の「願い」を発したことに反応し、黒い影が出現。「ネガイヲ、カナエテ……」と多数の人の声が重なっているような響きが聞こえてきて、DPCは影に取り込まれ御神木のある崖から落ちてしまう。(数メートル近くあるため、大怪我を負ったかもしれないが、不思議なことに目立った外傷はない。だが表情は虚ろ)

「本来なら大怪我をしていてもおかしくない高さだった。しかし、駆け寄ってみると奇妙なことに、着衣に汚れがついた程度で、目立った外傷は一つも見当たらなかった」

命の危機を感じた共鳴者はすぐに119番をしてDPCの元へ駆けつける。駆け付けた共鳴者に対してDPCは「あれ……? ごめん、私たち、ここに何しに来たんだっけ?」と言い、意識を失う。

楽しい時間は、あっという間に過ぎていきます。 人混みを離れ、あなたたちは神社の裏手、御神木のある静かな場所へとやってきました。 賑やかな祭囃子は遠くなり、辺りを支配するのは、木々のざわめきと、深い夜の闇です。

見上げれば、樹齢数百年という巨大な御神木が、無数の短冊を揺らしながら、夜空に向かって枝を伸ばしています。 ここなら、誰にも邪魔されません。

(告白しようとするRPの後)

DL: あなたが口を開こうとした、その時でした。 ふわり。 生温かい風が吹き抜け、世界の色が変わったような錯覚を覚えます。

謎の声: 『……ネガイヲ……』

DL: どこからともなく、声が聞こえました。 男のような、女のような。子供のような、老人のような。 無数の声が重なり合った、湿った響き。

謎の声: 『……ネガイヲ、カナエテ……』

DL: 次の瞬間、御神木の影から、黒い「何か」が溢れ出しました。 それは霞(かすみ)のように[DPCの名前]にまとわりつき――。

DPC: 「――っ!?」

DL: 短い悲鳴とともに、[DPCの名前]の姿が崖下へと吸い込まれていきました。

共鳴判定(強度8/上昇1d2)/ ∞共鳴感情:[愛,恋(関係)]

(救助後、意識を取り戻すシーン)

DL: あなたの必死の呼びかけに、[DPCの名前]がゆっくりと瞼を開けます。 怪我はありません。今の落下が嘘だったかのように、綺麗なままです。 しかし、その瞳は、どこか焦点を結んでいないように見えます。

彼女/彼は、不思議そうに周囲を見回し、そしてあなたの顔を見て、こう言いました。

DPC: 「あれ……? ごめん。 私たち、ここに……何しに来たんだっけ?」

(ここで休憩を挟む。余談だが私はよく「そんなタイミングで休憩を挟むな!」と怒られる(褒められる)ことが多い。やはりTRPGは感情を揺り動かす遊びなので……)

 2. 展開フェイズ:『零れ落ちる記憶』 (45~90分)

目的: 記憶喪失の進行を目の当たりにし、切なさを高める。同時に、怪異の正体とDPCの「想い」の強さを確認する。

【シーン4:異変の自覚 (15分)】

描写: DPCは念のため数日間、病院で入院することに。しかしDPCの様子がおかしい。

イベント: DPCの記憶喪失が「直前のこと」だけでなく、もっと広範囲に及んでいることが判明する。セリフ例:「昨日買ったお揃いのキーホルダー?覚えてないな」「 私たち、浴衣だったっけ?」「御神木……行った覚えもないし、行こうとなんて思わないよ」

(怪異の持つ「失恋」「諦め」「忘却」の感情に上書きされつつあることを示唆する)

イベント:共鳴者はDPCを助けるため、二人の思い出を辿ることを決意する。

「ここでじっとしていたら、本当にあなたのことを全部忘れちゃいそうな気がするの。だから、連れて行って」

DPCもそれに乗っかり、病院を一時的に出る。

DL: 医師の話では、[DPCの名前]に身体的な異常は全く見られないとのこと。 ただの貧血か、過労だろうと。 しかし、ベッドの上に座る彼女/彼の様子は、どこかあやふやです。

DPC: 「……共鳴者。おはよう」 「あのね、なんか変なんだ」

DL: 彼女/彼は、自身の持ち物や、置かれている服を不思議そうに見つめています。

DPC: 「私、なんで入院してるんだろう。昨日は……確か、普通に家で寝て……」 「あれ? このキーホルダー(お揃いのもの)、いつ買ったんだっけ? 私、こんなの持ってたかな」

DL: その言葉に、あなたの背筋が凍ります。 昨夜の「お祭り」の記憶だけでなく、それ以前の――「二人で過ごした日常」の記憶さえもが、虫食いのように抜け落ちている。 まるで、頭の中に白い霧がかかっているかのように。

DPC: 「ねえ……怖い。思い出せないの。自分が自分でなくなっていくみたいで……怖いよ」 「お願い、ここから連れ出して。二人の思い出の場所に行けば、何か思い出せる気がするの」 「ここでじっとしていたら……私、あなたのことまで全部、忘れちゃいそうな気がするんだ……!」

【シーン5:思い出巡り (30分)】

描写: シーン1.5で決めた二人の思い出の場所(2〜3箇所程度)。

イベント (RPと判定):共鳴者が必死に「ここでこうだったよね」と思い出を語る。しかしDPCは「そう、なんだ……ごめん、全然思い出せない」と返す。<直感>で振って成功すると、DPCは記憶は戻らないが「でも、ここに来ると何だか胸が温かい(切ない)」といった「感情の残り香」だけを感じ取る。段階的に記憶が消えていく描写とする。

場所A(最初の場所): 「うーん、なんとなく懐かしい気はするかな?」まだ少し希望がある。

 場所B(次の場所):「ごめん、本当に何も思い出せない。ここ、私たちが来た場所じゃないんじゃない?」疑念と不安。 

場所C(最後の場所・シーン6直前):「……」無反応。あるいは、持っているお揃いのアイテムを見ても「これ、誰の?」と聞く。 

怪異の調査: 各場所で「共鳴判定」を行い成功すると「自分たち以外の誰かの『悲しい恋の記憶』」の残滓を感じ取ることができる(怪異の正体に近づく)。

共鳴判定(強度8/上昇1d2)/ ∞共鳴感情:[愛,恋(関係)]

DL: 病院を抜け出した二人は、思い出の場所を巡ることにしました。 街は昨夜の喧騒が嘘のように、穏やかな日常を取り戻しています。 けれど、あなたたちの時間だけが、残酷に巻き戻されていくようです。

<場所A:最初の場所(例:公園やカフェ)> DL: まずは、二人でよく訪れた[場所A]です。 あなたは必死に、ここでどんな話をしたか、どんな時間を過ごしたかを語りかけます。

DPC: 「うん……うん……」 「なんとなく、懐かしい匂いがする。ここに来て、あなたと笑い合ったような……そんな気がする」

DL: 彼女/彼は眉を寄せ、記憶の糸を手繰り寄せようとしています。 まだ、間に合うかもしれない。そんな微かな希望が、あなたの胸に灯ります。

<場所B:次の場所(より深い思い出の場所)> DL: 次は、[場所B]へ向かいます。 ここは、二人にとってさらに特別な場所のはずです。 しかし、到着した[DPCの名前]の反応は、あなたの期待を裏切るものでした。

DPC: 「…………」 「ごめん。本当に、何も思い出せない」 「ここ、本当に私たちが来た場所? 景色を見ても、何も感じないの。まるで、知らない誰かの話を聞いているみたい」

DL: 彼女/彼の瞳から、先ほどまでの「懐かしさ」という光が消えています。 あるのは、困惑と、自分自身への恐怖だけ。

<怪異の調査:共鳴判定(強度8)成功時> DL: その時、あなたの背筋を冷たいものが走り抜けました。 [DPCの名前]が忘れているだけではない。何かが、おかしい。 この場所には、二人の思い出があったはずです。 けれど今、あなたが感じるのは――「誰かの悲しみ」です。

『ツタエタカッタ……』『ワスレタクナイ……』

DL: それは、あなたたちの記憶ではありません。 もっと古く、もっと悲痛な、数えきれないほどの「叶わなかった恋」の残滓(ざんし)。 それが[DPCの名前]の心に、泥のように降り積もっている気配を感じ取ってしまいました。

【シーン6:決定的な喪失 (15分)】

描写: 思い出を巡れば巡るほど、あなた(共鳴者)の言葉はDPCの心をすり抜けていくようだった。焦りが、あなたの喉をカラカラにさせる。

イベント (クライマックスへの導入)

「あのね……」

DPCが、おずおずと口を開く。その声は、ひどくか細く震えている

「さっきから……ずっと、私のために色々な場所に連れて行ってくれてるよね。 一生懸命、何かを伝えようとしてくれてるのも、すごく伝わってくる」

DPCは、泣き出しそうなのを必死にこらえるように、無理に笑顔を作ろうとする。 だが、その瞳は、あなた(共鳴者)を見ているようで、どこか焦点が合っていない。 まるで、あなたとの間に薄い霞がかかってしまったかのように。

「でも……ごめんなさい」 「私、もう……あなたの名前が、分からないんだ」

その言葉は、夕暮れの喧騒の中で、やけにはっきりとあなたの耳に届く。

「ずっと一緒にいたはずなのに。こんなに、こんなに胸が苦しくて、大切な人だったはずなのに。 あなたが、誰だか、分からない……」

DPCの瞳から、一筋、涙がこぼれ落ちる。 それは「悲しい」からか、「申し訳ない」からか。 いや、あるいは――「忘れてしまう」ことへの恐怖からか。 あなた(共鳴者)は、その涙の意味さえ、もうDPCに尋ねることができない。

「私、行かなきゃ……」

そしてDPCは何かに導かれるように、御神木へ向かっていってしまった。

(阻止しようとした場合、共鳴者やDPCにケガをさせてしまう恐れがあることを伝え、やめさせる。それでも阻止する場合は身体技能で判定し、成功すると以下の描写。

あなたがDPCの腕を掴んだ瞬間、その体はまるで霞(かすみ)のように実体を失い、あなたの手は空を切る。 あるいは、二人の間に急に濃い霧が立ち込め、視界が真っ白になる。 霧が晴れた時、DPCは既に数メートル先にいて、うつろな目で御神木を見つめている。

 3. クライマックスフェイズ:『忘れじの言の葉』 (10〜15分)

目的: DPCに残された最後の「想い」をトリガーに、共鳴者が「告白」という形で決着をつける。

【シーン7:最後の場所へ。決着の告白】

 描写: すべてが始まった御神木の前。怪異が実体化しかけ、DPCを完全に取り込もうとしている。

 イベント:DPCは共鳴者のことを忘れている。だが、胸を押さえてこう呟く。

DPCのセリフ:「分からない……あなたは誰? でも、私、誰かのことがすごく好きで……その人に『好き』って伝えたかった……! その気持ちだけが、消えないんだ……!」

 イベント: 共鳴者は、その「忘れじの言の葉」に応える。

 共鳴者の行動: 「その相手は私だ!」と、あの時言えなかった「告白」を叩きつける。

 クライマックス判定:—共鳴判定で極限共鳴(成功数3以上)を起こせば成功。判定値8とする。共鳴レベルはシーン5に行う共鳴判定で上がるため、4~5程度の想定。万が一1~3のままここまで来てしまいそうならシーン6や7の前で共鳴判定を追加で行うこと。RPボーナスの導入 また、共鳴者の「告白」が心を打つものであった場合、DPCへの想いが十分に伝わったとDLが判断した場合、ダイスを+2〜3個追加する。「あなたの言葉は確かに届いた。その想いの強さを、ダイスに乗せて!」と演出すれば、PLも熱が入ります。

DL: [DPCの名前]を追いかけ、あなたは再び、すべての始まりの場所――御神木の前へとたどり着きます。 そこには、異様な光景が広がっていました。

樹齢数百年の大樹が、風もないのに激しくざわめいています。 サラサラ、サラサラ。 それは葉擦れの音ではありません。 そこに結ばれた無数の短冊、そこに込められた「叶わなかった願い」たちが、一斉に啜り泣いている音です。

その中心に、[DPCの名前]が立ち尽くしています。 彼女/彼の周囲には、御神木の前。DPCの周囲には、ピンクや紫色の甘く濁った霞が渦を巻き、今にもその存在を溶かし込もうとしています。 しかし、DPCに苦悶の表情はありません。 ただ、ひどく悲しげで、寂しそうな顔で、自分の輪郭が薄れていくのを呆然と受け入れています。

PLが助けようとした場合の処理 あなたが手を伸ばしても、その手は虚しく空を切ります。 物理的な距離は近いはずなのに、二人の間には、何光年もの「心の距離」があるかのように触れることができません。 あなたは直感します。 腕力でも、道具でもない。 この霞を打ち払い、彼女/彼をこちらの世界に繋ぎ止めることができるのは、あなたの「魂からの言葉」だけだと。

それでも。 [DPCの名前]は、胸を強く、強く押さえて、震える声でこう呟きます。

DPC: 「分からない……あなたは誰? 何も思い出せない……」 「でも……!」 「私、誰かのことがすごく好きで……その人に、どうしても『好き』って伝えたかった……!」 「名前も顔も分からないのに、この気持ちだけが、痛いくらいに消えないんだ……!」

DL: 記憶を失っても、なお消えない想い。 それこそが、怪異が求め、そして彼女/彼を現世に繋ぎ止めている「忘れじの言の葉」です。

さあ、共鳴者(あなた)。 今こそ、その想いに応える時です。 霞の中に消えそうな彼女/彼の手を掴み、あの時言えなかった言葉を、魂の底から叩きつけなさい!

(ここで共鳴者の告白RP)

DL: あなたの言葉は、霞を切り裂いて[DPCの名前]へと届きます。 その想いの強さを、今、ダイスに込めましょう。 これが、二人の運命を決める一投です!

(クライマックス共鳴判定:強度8 / 成功数3以上) ※ここで「いいRPだ!その想い、届けよう!」と言ってダイスボーナスを与えると盛り上がります!

 4. エンディングフェイズ:『言の葉の行方』 (5〜10分)

目的: 判定結果に基づき、二人の結末を描写する。

【エンディングA:成功(ハッピーエンド)】

 描写: 共鳴者の告白が怪異を浄化する。DPCに全ての記憶が戻る。

共鳴者が判定に成功すると、忘れ恋の霞が実体化し人の姿となる。多数の人の声が重なっているような響きがお礼を言う。「アリガトウ……ワタシタチモ、アナタタチノヨウニ、オモイヲ、ツタエタカッタ……。ドウカ、ワタシタチノブンマデ……オシアワセニ……」 と言い、消えてしまう。

 結末: 「全部思い出した。私も、あなたのことが好き!」と両想いになる。甘いエピローグ。

【エンディングB:失敗(ビターエンド/救い)】

 描写: 怪異は消え去るが、DPCの記憶は完全には戻らない。

共鳴者の声は届いた。しかし、怪異はすでにDPCの『記憶』を深く取り込みすぎていた。怪異は浄化されず、DPCの『あなたに関する記憶』という代償を持って、満足げに去っていく」「アア……コレデワタシタチモシアワセニ……」と多数の人の声が重なっているような響きが言い残し、辺りに怪異の気配はなくなる。DPCの虚ろな目は変わらない。

 結末: しかしDPCは共鳴者の告白を受け入れ、胸に残った「好き」という感情を信じる。「あなたのことはまだ思い出せない。でも、私もあなたのことが好きだと思う。……だから、もう一度ゼロから教えてくれる?」と微笑む。切ないが、救いのあるエピローグ。

エンディングフェイズ:描写テキスト案

【エンディングA:成功(ハッピーエンド)】 (BGM:感動的な曲、ピアノやストリングスの優しい曲)

DL: あなたの叫びが夜空に響き渡ります。 その瞬間、御神木から溢れていた濁った霞が、眩しい光へと変わりました。

光の中に、数え切れないほどの人々の影が浮かび上がります。 それは、昔々、この場所で涙を飲んだ恋人たちの姿かもしれません。 彼らはあなたたち二人を優しく見つめ、幾重にも重なった声で、こう囁きました。

怪異(願イ人たち): 『アリガトウ……』 『ワタシタチモ、アナタタチノヨウニ、オモイヲ、ツタエタカッタ……』 『ドウカ、ワタシタチノブンマデ……オシアワセニ……』

DL: 光の粒子となって、怪異は夜空の星々へと昇っていきます。 後には、静寂と、満天の星空だけが残されました。

そして、あなたの目の前には。 憑き物が落ちたように晴れやかな顔で、[DPCの名前]が立っています。 その瞳には、しっかりと「あなた」が映っています。

DPC: 「……(共鳴者)」 「全部、思い出した。……ううん、忘れるわけないよね」

(DPCは涙ぐみながら、最高の笑顔を見せます)

DPC: 「私も、あなたのことが好き!」

DL: 遠回りをしたけれど、二人の想いはようやく重なりました。 星祭りの夜、伝説は本当になったのです。 これからもずっと、二人は新しい思い出を積み重ねていくことでしょう。 ハッピーエンド、お疲れ様でした!

【エンディングB:失敗(ビターエンド/救い)】 (BGM:切なく静かな曲、オルゴールなど)

DL: あなたの必死の告白は、確かに届きました。 しかし、[DPCの名前]を包む霞は、あまりにも深く、濃すぎたのかもしれません。

怪異: 『アア……コレデ、ワタシタチモ、シアワセニ……』

DL: 満足げな、しかしどこか哀れみを含んだ声が響き、霞はスッと引いていきます。 怪異は去りました。 ですが、その手には、代償として奪われた「あなたとの記憶」が握られていたのかもしれません。

風が止み、御神木の下には静寂が戻ります。 [DPCの名前]は、ぼんやりとあなたを見つめています。 その瞳の虚ろさは、変わりません。

共鳴者: (名前を呼ぶ、あるいは反応を見る)

DPC: 「……ごめんなさい」

DL: その言葉に、あなたの胸が締め付けられます。 やはり、思い出せなかったのか。そう諦めかけた時でした。 彼女/彼は、自身の胸に手を当てて、困ったように、でも優しく微笑みました。

DPC: 「あなたのことは、まだ思い出せないの」 「でもね……ここにある『好き』って気持ちだけは、どうしても消えなかった」 「だから私、記憶はないけど……あなたのことが好きだと思う」

DL: 彼女/彼は、震える手であなたの手に触れます。

DPC: 「ねえ。だから、もう一度ゼロから教えてくれる?」 「あなたの名前。私たちがどうやって出会ったのか。どんな話をしたのか」 「ここから、また始めてもいいかな?」

DL: 失われた記憶は、もう戻らないかもしれません。 けれど、恋する心だけは、どんな怪異にも奪えませんでした。 「初めまして」から始まる二人の恋は、きっと以前よりも強く、優しいものになるはずです。

ビターエンド、ですが……これは新しい物語の始まりです。 お疲れ様でした。

OP:ハナムケのハナタバ ED:パンとフィルム